はじめに
東芝という名前を聞いて、どんなイメージを持ちますか?
多くの人は、家電やパソコンなどの製品を思い浮かべるでしょう。
しかし、東芝はそれだけではありません。
原子力発電や防衛産業など、日本の産業界や経済に大きな影響を与える企業でもあります。
そんな東芝が、今年12月か来年1月にも上場廃止になると発表しました。
これは、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が東芝株を全て買い取るという株式公開買い付け(TOB)が成立したためです。
この記事では、東芝が上場廃止になる理由と影響について解説します。
東芝がどんな経営危機に陥ったのか、上場廃止が日本経済に及ぼす影響はどれくらいか、上場廃止後の東芝の展望はどうなるかなど、気になる点を詳しく見ていきましょう。
東芝が上場廃止になる理由
東芝が上場廃止になる理由は、主に2つあります。
一つ目は、不適切会計問題や米原子力子会社の巨額損失などで経営が悪化したことです。
二つ目は、海外ファンドなど「物言う株主」と経営方針を巡って対立したことです。
不適切会計問題や米原子力子会社の巨額損失で経営が悪化
東芝は2015年に不適切会計問題が発覚しました。
これは、売上高や利益を水増ししていたことが判明したことです。
この問題で東芝は約1500億円の損失を計上しました。
また、社長や会長などトップ経営者が辞任するなど組織的な責任を取りました。
さらに2017年には、米国で原子力発電所建設事業を行っていた子会社ウェスチングハウス社(WEC)が巨額損失を抱えて破綻しました。
これは、WECが買収したCB&Iストーン&ウェブスター社(CB&I)の事業価値が過大評価されていたことが原因です。
この問題で東芝は約7000億円の損失を計上しました。
これらの問題により、東芝は債務超過に陥りました。
債務超過とは、負債が資産を上回る状態のことで、会社の経営破綻の危機を意味します。
東芝は上場廃止を回避するために、半導体事業や白物家電事業などの主力事業を売却したり、増資を行ったりしました。
しかし、これらの対策は経営の安定化にはつながらず、経営の混乱が続きました。
海外ファンドなど「物言う株主」と経営方針を巡って対立
東芝が上場廃止になるもう一つの理由は、海外ファンドなど「物言う株主」と経営方針を巡って対立したことです。
「物言う株主」とは、自分たちが持つ株式の権利を行使して、企業の経営に介入しようとする株主のことです。
彼らは、企業の業績や株価を上げるために、経営陣に対して経費削減や事業再編などの要求を行います。
東芝では2017年に行った増資の多くを引き受けた海外ファンドの影響力が強まりました。
その中でも特に目立ったのが、シンガポールに拠点を置くエフィッサム・キャピタル(Effissimo Capital)です。
エフィッサム・キャピタルは東芝の最大株主であり、約10%の株式を保有しています。
エフィッサム・キャピタルは、東芝の経営陣に対して、株主監査委員会や社外取締役などの監督体制の強化や、株主還元策の実施などを求めました。
また、他の海外ファンドや日本政府系ファンドと連携して、東芝の経営方針に反対する動きも見せました。
東芝の経営陣は、これらの要求に応えることができませんでした。
東芝は長期的な視点で事業を成長させることを目指していましたが、「物言う株主」は短期的な利益追求を優先していました。
このように、東芝と「物言う株主」は経営方針で対立しました。
この対立は、今年3月に行われた臨時株主総会で頂点に達しました。
エフィッサム・キャピタルは、東芝が不正投票を行ったとして、昨年7月に行われた定時株主総会で選出された取締役4人(社長や会長など)の解任を提案しました。
しかし、この提案は否決されました。
この対立は、東芝の経営陣にとって大きな不信感を生みました。
東芝は、株主の意見を尊重しつつも、自らの経営判断を貫くことができないと感じました。
また、東芝は、株式市場における不安定な環境や規制の厳しさにも悩まされました。
そこで、東芝は、上場廃止という選択肢を seriously 考えるようになりました。
東芝が上場廃止になる影響
東芝が上場廃止になると、どのような影響があるでしょうか?
ここでは、東芝自身や株主、日本経済に及ぼす影響について考えてみます。
東芝自身にとっての影響
東芝が上場廃止になると、まず最初に感じる影響は、資金調達の難しさです。
上場企業は、株式や社債などを発行して市場から資金を集めることができます。
しかし、上場廃止になると、その手段が使えなくなります。
東芝は、JIPからの資金提供や銀行からの融資などに頼らざるを得ません。
また、上場廃止になると、情報開示の義務や監査の厳格さが緩和されます。
これは、一見すると経営の自由度が高まるように見えますが、実際には透明性や信頼性が低下する可能性があります。
東芝は、不適切会計問題や不正投票問題などで社会的な信用を失っています。
そのため、上場廃止によってさらに信用を落とすことは避けたいでしょう。
さらに、上場廃止になると、人材の確保や育成も難しくなります。
上場企業は、一般的に優秀な人材を引きつける力があります。
しかし、上場廃止になると、その魅力が失われます。
東芝は、技術力やイノベーション力を高めるために必要な人材を確保することができるでしょうか?
株主にとっての影響
東芝が上場廃止になると、株主にとっても大きな影響があります。
まず、株式の売買ができなくなります。
上場企業の株式は、市場で自由に売買することができます。
しかし、上場廃止になると、その機会が失われます。
株主は、JIPから提示された買い取り価格(4000円/株)でしか株式を売却することができません。
また、株主の権利や利益も保護されにくくなります。
上場企業の株主は、株主総会や議決権行使などで企業の経営に関与することができます。
しかし、上場廃止になると、その機会も減少します。
特に、「物言う株主」は、自らの要求を通すことができなくなります。
日本経済にとっての影響
東芝が上場廃止になると、日本経済にとっても重大な影響があります。
東芝は、日本の産業界や経済に大きな貢献をしてきた企業です。
原子力発電や防衛産業などの重要な分野で活躍しています。
また、半導体やバッテリーなどの先端技術を持っています。
これらの事業は、日本の国益や国際競争力に関わるものです。
しかし、上場廃止になると、東芝はこれらの事業を維持・発展させることができるでしょうか?
JIPは、東芝の事業を再編成し、収益性の高い部分だけを残すという方針を示しています。
これは、東芝の事業を切り売りすることを意味します。
その結果、東芝の事業は外資系企業や競合企業に奪われる可能性があります。
これは、日本経済にとって大きな損失です。
上場廃止後の東芝の展望
東芝が上場廃止になった後、どのような展望があるでしょうか?
ここでは、上場廃止後の東芝のメリットとデメリットについて考えてみます。
メリット
上場廃止後の東芝には、以下のようなメリットがあります。
- 経営の自由度が高まる。株式市場や「物言う株主」からの圧力から解放されることで、東芝は自らの経営判断を貫くことができます。
また、JIPは、東芝に対して干渉せずに自律的な経営を支援するという姿勢を示しています。 - 経営資源の集中が可能になる。JIPは、東芝の事業を再編成し、収益性の高い部分だけを残すという方針を示しています。
これは、東芝が経営資源を集中して事業を成長させることを可能にします。 - 資金調達の安定化が図れる。JIPは、東芝に対して最大1兆円の資金提供を行うという計画を発表しています。
これは、東芝が資金調達に困らないことを意味します。
デメリット
一方で、上場廃止後の東芝には、以下のようなデメリットもあります。
- 資金調達の多様性が失われる。
上場廃止になると、株式や社債などを発行して市場から資金を集めることができなくなります。
東芝は、JIPからの資金提供や銀行からの融資などに頼らざるを得ません。 - 情報開示や監査の透明性・信頼性が低下する。
上場廃止になると、情報開示や監査の義務や厳格さが緩和されます。
まとめ
東芝が上場廃止になる理由と影響について解説しました。
東芝は、不適切会計問題や米原子力子会社の巨額損失などで経営が悪化し、海外ファンドなど「物言う株主」と経営方針を巡って対立しました。
その結果、東芝は上場廃止という選択肢を seriously 考えるようになりました。
東芝が上場廃止になると、東芝自身や株主、日本経済に大きな影響があります。
東芝は、資金調達の難しさや情報開示の透明性の低下などのデメリットを受けますが、経営の自由度や経営資源の集中などのメリットも得ます。
株主は、株式の売買や権利・利益の保護ができなくなります。
日本経済は、東芝の事業が外資系企業や競合企業に奪われる可能性があります。
東芝が上場廃止になった後、どのような展望があるかは未知数です。
東芝は、JIPと協力して事業を再建し、再び上場することを目指すとしています。
しかし、それが実現するかどうかは、東芝の経営力や市場環境にかかっています。
東芝は、日本の産業界や経済に大きな貢献をしてきた歴史ある企業です。
そのため、多くの人々は、東芝が再び輝くことを期待しています。
再び輝く未来が待っている