1. はじめに
開発者にとって、日々の作業を効率化するためのCLI(コマンドラインインターフェース)は、もはや欠かせないツールです。そんな中、今、注目を集めているのが Gemini CLI です。
Gemini CLI は、Google の次世代AI「Gemini」(旧Bard) の機能を、ターミナル(コマンドライン)から直接活用できる強力なツールです。
テキストベースの操作により、キーボードから手を離さずにAIとやり取りができるため、作業のテンポを保ったまま効率的にアウトプットが得られます。
🔥 なぜ「Gemini CLI」が話題なのか?
- プロンプトを即座に試せる:思いついたアイデアをすぐにAIに投げかけて試行錯誤が可能
- コードレビューや修正を自動化:Gemini による静的解析で品質向上と工数削減が実現
- Webアプリよりも高速に、直接AIとやり取りでき、開発のテンポを損ないません
- スクリプトとの相性が良い:シェルスクリプトやCI/CDとの連携も容易に行えます
本記事では、この Gemini CLI の魅力や使い方を、初心者にもわかりやすく、かつ実用的な視点で解説していきます。
2. Gemini CLI のインストールと基本セットアップ
Gemini CLI を使うには、以下の2つのステップが必要です
- ツール本体のインストール(npmを使用)
- APIキーの取得と環境変数の設定
順番に見ていきましょう。
🛠 ステップ①:Gemini CLI 本体のインストール
▶︎ 1. Node.js をインストール(未導入の方のみ)
Gemini CLI は Node.js 環境が必要です。
まずは以下の公式サイトから「LTS(長期サポート版)」をインストールしましょう。
インストール後、以下のコマンドで確認してください
node -v
npm -v
どちらもバージョンが表示されればOKです。
▶︎ 2. Gemini CLI をインストール
ターミナル(またはコマンドプロンプト)で以下を実行します
npm install -g @google/gemini-cli
インストール確認
gemini --version
✅ バージョン番号が表示されれば、インストール成功です!
🔑 ステップ②:APIキーの取得と登録(環境変数)
Gemini CLI を使うには、Google AI Studio から発行される API キーが必要です。
▶︎ APIキーの取得手順
- ブラウザで Google AI Studio にアクセス
- Googleアカウントでログイン(GmailでOK)
- 「APIキーを作成」をクリック
- 表示されたキー(
sk-xxxx...
)をコピーして控える
▶︎ OSごとの環境変数設定方法
APIキーを「環境変数」として登録することで、毎回の入力を省略できます。
🐧 macOS / Linux の場合
一時的に設定する(セッション限定)
export GEMINI_API_KEY="sk-xxxx..."
永続的に設定する(毎回設定不要)
echo 'export GEMINI_API_KEY="sk-xxxx..."' >> ~/.zshrc # zshユーザー
またはecho 'export GEMINI_API_KEY="sk-xxxx..."' >> ~/.bashrc # bashユーザー
変更を反映source ~/.zshrc
またはsource ~/.bashrc
🪟 Windows の場合
一時的に設定する(PowerShellの場合)
$env:GEMINI_API_KEY="sk-xxxx..."
永続的に設定する(GUIで環境変数を追加)
- 「スタート」メニューで「環境変数」と検索し、「システム環境変数の編集」を開く
- 「環境変数(N)」ボタンをクリック
- 「ユーザー環境変数」セクションで「新規」をクリック
- 下記の内容を入力して「OK」:
- 変数名:
GEMINI_API_KEY
- 変数値:
sk-xxxx...
(コピーしたキー)
- ターミナルやエディタを再起動すると有効になります
📎 詳しい手順(公式解説)
👉 Microsoft公式:環境変数の設定方法
💡 環境別 まとめ早見表
OS | 方法 | 永続化のやり方 |
---|---|---|
macOS | .zshrc に追記 | echo 'export GEMINI_API_KEY=...' >> ~/.zshrc |
Linux / WSL | .bashrc に追記 | echo 'export GEMINI_API_KEY=...' >> ~/.bashrc |
Windows | GUIで環境変数を設定 | システム環境変数から追加(再起動必要) |
⚙️ gemini init
:設定ファイルを自動生成してカスタマイズ
Gemini CLI を初期化すると、プロジェクトディレクトリに .gemini.config.json
が生成されます。
gemini init
▶︎ 生成される設定ファイルの例
{
"apiKey": "sk-xxxx...",
"model": "gemini-1.5-pro",
"temperature": 0.7
}
項目 | 内容 |
---|---|
apiKey | 使用するAPIキー(環境変数より優先されない) |
model | 使用するAIモデル名(例:gemini-1.5-pro ) |
temperature | 出力の自由度(0.0〜1.0、高いほど創造的) |
▶︎ カスタマイズの例
{
"model": "gemini-pro-vision",
"temperature": 0.9
}
📌 .gemini.config.json
を使えば、プロジェクト単位で設定を切り替えられます。
チーム開発や用途別テンプレートにも便利です!
以上で、Gemini CLI のインストールとセットアップが完了しました。
次の章では、実際のコマンドの使い方を詳しく解説していきます!
3. 基本コマンドの使い方
ここからは、実際に Gemini CLI を使ってみましょう。
以下は、日常的によく使う基本コマンドの紹介です。
コマンド一覧(よく使うもの)
コマンド | 機能概要 |
---|---|
gemini init | プロジェクトの初期化 |
gemini prompt | 任意のプロンプトをAIに投げる |
gemini run | ファイルをAIに解釈・実行させる |
gemini file | ファイル内容を読み込んで分析 |
gemini config | 設定ファイルの管理 |
3-1. gemini prompt
:AIに自由に聞ける!
最も基本的で強力なのがこのコマンド。
任意の質問や指示をAIに対して直接送信します。
gemini prompt "このPythonコードを最適化して"
返答は即座にターミナル上に表示されます。複雑な操作が不要で、驚くほどスムーズです。
3-2. gemini run
:ファイルをAIで解釈
このコマンドは、指定したファイルの中身をAIに解析させるためのもの。
gemini run src/index.js
結果として、コードの意図、改善点、バグの可能性などが提示されます。
3-3. gemini file
:複数ファイルでのAI解析
複数ファイルやディレクトリ全体をAIに分析させたい場合はこちらを使います。
gemini file ./project/
構造の分析、コメントの提案、関数単位のリファクタリング案などが得られます。
3-4. gemini init
:プロジェクトの初期化
このコマンドを使うことで、Gemini CLI用の設定ファイルを自動生成できます。
gemini init
生成される .gemini.config.json
を編集すれば、APIバージョンやモデル指定も可能になります。
3-5. gemini config
:設定の変更
CLIに設定されたAPIキーやモデルなどを確認・変更したいときはこちら。
gemini config set apiKey=sk-xxx...
または、設定状況を確認したい場合は:
gemini config list
このあたりまでが、日常的に最もよく使うGemini CLIの基本コマンドです。
4. 便利なユースケース集
Gemini CLI は、単なる質問応答のツールではありません。
日々の開発や業務の中で、実際に「使える」シーンがたくさんあります。
ここでは、実際に役立つ代表的なユースケースをいくつか紹介します。
📌 ユースケース①:プロンプト生成・テスト
Gemini CLI を使えば、AI によるプロンプトの生成・テストがスムーズに行えます。
以下は、その一例です。
gemini prompt "Node.js で REST API を作るテンプレートを書いて"
このように、プロンプトに対する回答を即座に取得できるため、プロンプトエンジニアリングの試行錯誤が劇的に加速します。
📌 ユースケース②:コードレビューの自動化
GitHub 上のプルリクエストをチェックする前に、Gemini CLI にコードファイルを読み込ませてレビューをさせることができます。
gemini run ./src/login.js
返答例
このコードでは、エラーハンドリングが不足しています。
try-catch ブロックを追加するとより堅牢になります。
これにより、レビュー工数を削減しつつ、品質の向上を図れます。
📌 ユースケース③:ドキュメント自動生成
コードベースからドキュメントを自動生成する用途にも有効です。
gemini prompt "以下のコードに対するREADME.mdを生成してください" < index.js
このようなプロンプトを活用することで、手間のかかるドキュメント作成を大幅に自動化できます。
📌 ユースケース④:バグ解析&修正案提示
手元で動かないスクリプトの原因を解析してもらう用途も定番です。
gemini run ./script.sh
このスクリプトは `bash` シェルで実行することを前提にしていますが、`#!/bin/sh` となっているため `if [[` が正しく解釈されません。
このような指摘により、初心者でも原因に早く辿り着けるのが大きなメリットです。
📌 ユースケース⑤:CI/CD への組み込み
例えば、コミット時に gemini run
を自動実行することで、コードのチェック・提案を組み込めます。
# .github/workflows/codecheck.yml の例
- name: Run Gemini CLI
run: gemini run ./src/
これにより、プルリク作成時点でAIレビューが走る自動化フローが構築できます。
5. 高度な活用テクニック
Gemini CLI をさらに一歩進んで使いこなしたい方のために、以下のような応用テクニックを紹介します。
🛠 カスタムテンプレートの導入
定型のプロンプトセットを YAML 形式で保存しておき、いつでも呼び出せるようにすると効率的です。
gemini prompt --template dev-check.yaml
テンプレートの中身(例)
prompt: |
以下のコードに対して、パフォーマンス改善の視点でレビューをお願いします。
{{code}}
このようにしておけば、チーム全体でプロンプトを統一でき、品質が安定します。
🌀 パイプ処理との連携
CLIの特性を活かし、UNIX系ツールと組み合わせた活用が可能です。
cat index.js | gemini prompt "このコードの脆弱性を指摘してください"
またはファイル差分をそのまま解析させることもできます。
git diff | gemini prompt "この差分で懸念点はありますか?"
🔍 ログ出力・非同期処理
Gemini CLI はデフォルトで出力を stdout に表示しますが、ログファイルとして保存も可能です。
gemini run ./app.py > logs/review.txt
これにより、履歴の保存や、後でのレビュー・報告がしやすくなります。
6. トラブルシューティング&よくあるQ&A
CLIツールにありがちな「うまく動かない」「返答がこない」といった問題の原因と解決策をまとめました。
❓ エラー:Invalid API Key
原因:APIキーの記述ミス、または期限切れ。
対処法
gemini config list
で設定を確認- 正しいAPIキーを再設定:
gemini config set apiKey=sk-xxxx...
❓ エラー:Unknown command
原因:コマンドタイプミス、またはCLIのバージョンが古い可能性。
対処法
gemini --help
で利用可能なコマンドを確認- 最新バージョンにアップデート:
npm install -g @google/gemini-cli
❓ 出力が返ってこない/止まる
原因:ネットワークの問題、またはプロンプトが複雑すぎる。
対処法
- プロンプトを短くして再送信
- ネット接続を確認(プロキシやVPNの影響もチェック)
❓ Windows で動かない
原因:PowerShell 特有の文字列処理や、環境変数の設定方法の違い。
対処法:
$env:GEMINI_API_KEY="sk-xxxx"
もしくは WSL(Windows Subsystem for Linux)環境での実行がおすすめです。
7. まとめ&今後の展望
ここまで、Gemini CLI の基本から応用までを徹底的に解説してきました。
最後に、本ツールの魅力を振り返りながら、今後の可能性についても触れておきましょう。
✅ Gemini CLI を使うメリットのおさらい
機能 | 利用シーン | メリット |
---|---|---|
プロンプト実行 | プログラムの自動化や提案 | GUIより速く、柔軟な出力が得られる |
コード解析 | バグ発見、リファクタリング提案 | 自動レビューによる時間短縮 |
ドキュメント生成 | README、API仕様書など | 資料作成の自動化で作業負担を軽減 |
スクリプト連携 | CI/CDやGitフックに組み込み | 開発フローの自動化と一貫性確保 |
カスタムテンプレート | 定型プロンプトやチーム活用 | 品質のばらつきを防ぐプロンプト統一 |
このように、Gemini CLI は単なる“対話AI”ではなく、開発支援の中核的ツールへと進化しています。
🚀 今後のアップデートに期待されること
Gemini CLI は今後さらに進化していくことが予想されます。
以下は、期待される新機能や改善点です
- 複数モデルの選択機能
GPT-4とGeminiの比較活用や、出力品質の切り替えなど柔軟性が高まる可能性があります。 - GUIとのハイブリッド連携
ブラウザ上のGemini StudioやVSCode拡張機能との連携強化により、CLIとGUIの融合が進むかもしれません。 - APIレスポンスの構造化
JSON形式での応答出力や、スキーマに準拠した返答など、機械処理に適した形式でのレスポンスが期待されます。 - より高精度なコード生成・修正
GeminiのLLMが進化することで、自然言語だけでなく、プログラミング言語に特化した出力精度がさらに向上する見込みです。
🌟 開発者にとっての未来とは
今後、Gemini CLI のようなツールは、人間の開発プロセスを補完・加速する“AIアシスタント”の中核となっていくでしょう。
- 思考の整理
- コーディングの補助
- レビューの効率化
- 自動テストの設計補助
こうした分野で、AIが開発者の「右腕」になる時代が、すぐそこまで来ています。
✍️ 最後に:今こそGemini CLIを体験しよう
CLIに馴染みがない方でも、この記事を読んだあなたならきっと使いこなせるはずです。
まずは、以下の一歩から始めてみてください。
npm install -g @google/gemini-cli
gemini prompt "こんにちは、私は何から学べばいいですか?"
あなたの開発スタイルを、今よりもっと効率的で創造的に。
Gemini CLI は、AIと共に成長するすべての開発者の新しいスタンダードです。