朝起きて時間を確認する時も、通勤の合間にニュースを眺める時も、寝る前につい動画を見てしまう時も、手の中にはいつもスマホがある。
今やスマホは財布と鍵に並ぶ大事な持ち物になっている。
そんなスマホに、新しいルールが導入されることをご存じだろうか。
スマホ新法と呼ばれるこの法律は、アプリの入れ方と決済の仕組みと検索の使い方に静かに影響を与え始めている。
それなのに、多くの人はニュースの見出しを何となく眺めただけで、具体的な内容までは把握できていない。
内容を知らないまま今まで通りに使い続けるか。
重要なポイントだけ押さえて、これからも安心してスマホを使い続けるか。
選ぶのは利用者一人一人だが、その差は数分の理解と小さな設定の積み重ねで決まる。
本記事では、専門用語をできるだけ避け、初心者でも今日から実践できるスマホ新法時代の守り方を分かりやすく解説する。
難しいことを覚える必要はない。
端末の設定とアプリの選び方とお金の守り方という三つの視点から、家族と自分のスマホを安全に保つための具体的な手順を順番に見ていこう。
ポチップ
1. スマホ新法とは
スマホ新法は、正式名称をスマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律とする。
対象となる主な分野は次の四つである。
- モバイル端末の基本ソフト
- アプリ配信の仕組み
- ウェブ閲覧用の仕組み
- 検索の仕組み
大規模な事業者に対し、アプリ配信の独占を弱め、決済と検索などの選択肢を増やすことを求める内容となる。
全面施行は2025年12月18日の予定であり、その後は端末とアプリ側の対応が順に進む見込みである。
この法律の目的は、次の二点に整理できる。
- 特定の企業への過度な依存を減らすこと
- 多様なサービスを利用者が選べる環境を整えること
ただし、自由度が高まることは同時に、利用者自身の判断と防御の重要度が増すことも意味する。
2. スマホ新法で何が変わるか
生活の中で実際に関係しそうな変化を、利用者の目線から絞り込む。
2-1 アプリ入手先の選択肢が増える可能性
これまで多くの端末では、基本的に公式配信サービスからのみアプリを入手していた。
スマホ新法以後は、条件を満たした別の配信サービスが登場する可能性が高くなる。
その結果、次の状態が想定される。
- 新しい配信サービスから独自アプリを入手できる
- 特定企業に依存しない配信経路が増える
一方で、審査内容と安全基準が配信サービスごとに異なる点に注意が必要となる。
2-2 決済方法の幅が広がる
アプリ内課金と定期購入は、従来は大手企業の決済仕組みにほぼ限定されていた。
新しい枠組みでは、別の決済手段を選ぶ余地が増える可能性がある。
例として、次のような変化が想定される。
- クレジット決済以外の手段が増える
- アプリ内ではなく外部ページでの支払い案内が増える
- 料金体系が多様になる
利便性は上がるものの、支払い先ごとの規約と返金ルールの違いを自分で確認する必要が生じる。
2-3 標準の閲覧用ソフトと検索の選択がしやすくなる
端末を初期設定した時に最初から選ばれている閲覧用ソフトと検索サービスについても、利用者が簡単に変更できる仕組みが求められる。
この結果、次の点が変化する可能性がある。
- 初回起動時に選択画面が表示される
- 複数の閲覧用ソフトと検索サービスから、自分で選んで設定できる
選択肢が増えること自体は望ましいが、安全機能と更新頻度の違いを理解した上で選ぶ必要がある。
初回起動時の「選択画面」に注目 今後は端末を使い始める際、どのブラウザや検索エンジンを使うか選ぶ画面が表示されるようになります。「いつも通り」で進めるだけでなく、各サービスの安全性を意識して選ぶきっかけにしましょう。
3. スマホ新法に伴う主なリスク
ここからは、安全な生活を守るために押さえておきたいリスクを整理する。
3-1 公式以外の配信サービス経由での有害アプリ
公式配信サービスでは、危険なアプリを排除するための審査が整えられてきた。
別の配信サービスが増えると、次のような危険が高まる可能性がある。
- 審査が不十分なサービスから脆弱なアプリが配布される
- 同意なく位置情報と連絡先を収集するアプリが紛れ込む
- 課金の仕組みが不透明なアプリが増える
中には、見た目は人気ゲームに似せながら、実際には情報を盗む目的で作られたアプリが存在する場合もある。
3-2 有害コンテンツと違法サービスへの接触リスク
配信サービスの基準が緩い場合、次のようなアプリが入り込みやすくなる。
- オンライン賭博に関連するアプリ
- 成人向けコンテンツに直結するアプリ
- 知的財産を無断利用するコンテンツ配布アプリ
未成年が利用する端末では、フィルタリング機能が十分に働かない閲覧用ソフトを選んでしまうと、保護が弱くなる恐れがある。
3-3 決済の仕組みが複雑化する
決済手段が増えることは便利だが、次の点で負担が増える。
- 引き落とし元が複数に分かれ、管理しにくくなる
- 不明な請求があった時の連絡先が分かりにくい
- 決済サービスごとに、返金と解約の手順が異なる
不正利用が起こった場合に備え、どこに問い合わせればよいか事前に把握しておくことが重要となる。
3-4 子どもと高齢者の保護機能の弱体化
スマホ新法の枠組み自体は安全確保を重視しているものの、実際の運用では次の懸念がある。
- 新しい閲覧用ソフトが、従来のフィルタリング設定に対応しない
- 保護者が把握していない配信サービスからアプリが導入される
- 高齢者が勧誘により危険なアプリを導入してしまう
技術的な仕組みだけでは防ぎ切れない部分が増えるため、家庭でのルール作りと定期的な確認が欠かせない。
4. スマホ新法で期待できる利点
リスクばかりに目を向ける必要はない。適切な対策を取れば次のような利点もある。
- アプリ開発者にとって手数料負担が軽減され、魅力的なサービスが増える可能性
- 決済の競争により、一部のサービス料金が抑えられる可能性
- 閲覧用ソフトと検索サービスの選択競争により、性能と利便性が向上する可能性
重要なのは、これらの利点を享受しつつ、危険な選択肢を避ける判断力を身につけることだといえる。
5. 一般利用者向けの安全対策チェックリスト
ここからは、技術に詳しくない人でも実行しやすい対策を段階ごとに整理する。
5-1 三つの基本ルール
- アプリ入手は原則として公式配信サービスから行う
- 不明な配信サービスと決済画面では個人情報を入力しない
- 端末の更新とセキュリティ機能を常に有効に保つ
この三点を守るだけでも、危険は大きく減らせる。
5-2 アプリを入れる前に確認する五つの項目
アプリ導入前に、次の項目を確認する。
- 配信元
知名度のある企業か、公式サイトからも案内されているかを確認する - 評価とコメント
低評価が極端に多くないか、不自然な高評価ばかりでないかを確認する - 更新頻度
最終更新日が極端に古くないかを確認する - 権限
機能に見合わない権限を要求していないか確認する - 料金
無料と書かれていても、定期課金が含まれていないかを確認する
5-3 端末の設定で行う基本対策
この表は、一般利用者が一日で実行できる範囲に絞った設定の例である。
項目を上から順に確認すれば、短時間で基本防御を整えられる。
| 項目 | 設定内容 | 目安 |
| 端末更新 | 基本ソフトとアプリの更新を自動設定にする | 一週間に一度は確認 |
| 画面ロック | 生体認証と6桁以上の暗証番号を設定する | 常に有効 |
| 配信元制限 | 不明な配信元からのインストールを無効にする | 原則として無効 |
| 権限管理 | 位置情報やマイクは必要なアプリだけ許可する | 3か月ごとに見直し |
| 無線接続 | 公共Wi-Fi利用中は金融操作を避ける | 常に意識する |
5-4 決済と定期購入の管理
スマホ新法以後は、決済手段が複数に分かれる可能性がある。次の点を習慣にすると、思わぬ出費を防ぎやすくなる。
- 月に一度、端末の定期購入一覧を確認する
- クレジット請求明細で見覚えのない項目がないか確認する
- 解約手順が不明なサービスは利用前に調べておく
6. 子どもと高齢者を守るための設定とルール
6-1 子どもの端末で最低限行う設定
- 利用時間と利用内容の管理機能を有効にする
- 年齢に応じたコンテンツ制限を設定する
- 公式以外の配信サービスからのインストールを制限する
- 新しいアプリを入れる時は保護者の確認を通す運用にする
あわせて、次のような家庭内の取り決めを文章で残すとよい。
- 端末を使う目的
- 一日の利用時間の上限
- 就寝前の利用をやめる時刻
- 困ったことが起きた時に相談する相手
6-2 高齢者の端末で意識したいポイント
高齢者の端末では次の点を重視する。
- 画面の説明を簡潔にし、操作ミスを減らす
- 新しい配信サービスと閲覧用ソフトを不用意に追加しない
- 金融関連アプリは数を絞り、操作方法を紙に整理しておく
- 不審な通知とメッセージが届いた時の連絡先を家族と共有しておく
7. 在宅勤務と副業でスマホを使う場合の注意点
在宅勤務と副業でスマホを活用する人は、次の点に特に注意する。
- 勤務先支給端末と私物端末を明確に分ける
- 勤務先規程で禁止されている配信サービスとアプリを導入しない
- 副業の決済情報と個人利用の決済情報を混在させない
- クラウド保存設定を確認し、勤務先資料を私物クラウドに保存しない
副業で個人情報を扱う場合は、端末を紛失した際の影響が大きくなるため、画面ロックと遠隔削除機能の有効化が必須となる。
8. トラブルかもしれないと感じた時の相談先
次のような状況を見つけたら、早めの相談が重要となる。
- 覚えのないアプリが増えている
- 請求明細に不明な項目がある
- 端末の動作が極端に重くなった
- 勝手に広告が頻繁に表示される
ここでは、スマホからそのまま連絡できる相談先を具体的に整理する。
8-1 居住地の消費生活センターと消費者ホットライン１８８
料金トラブルと悪質勧誘と解約問題など、契約とお金に関する不安がある場合は、居住地の消費生活センターが頼りになる。
最寄りの窓口が分からない時は、局番なし１８８の消費者ホットラインに電話すると、近くの相談窓口を案内してもらえる。
ポイントは次の通りである。
- 電話番号
局番なし１８８ - 相談内容の例
高額な定期課金、解約できないサービス、偽通販サイトの疑いなど - 事前に準備しておくとよい情報
利用したサービス名、請求金額、請求日、契約時の画面のスクリーンショットなど
8-2 警察のサイバー犯罪相談窓口と警察相談専用電話 #９１１０
犯罪かどうか判断が付かない場合を含め、明らかな不正アクセスとフィッシングと脅迫などの可能性がある時は、警察への相談を検討する。
全国共通で利用できる窓口として、警察相談専用電話がある。
- 電話番号
#９１１０ - 想定される相談内容
フィッシングサイトに口座番号を入力してしまった
アカウントを乗っ取られた可能性がある
誹謗中傷と脅迫めいたメッセージが届いた
サイバー分野に特化したオンライン窓口も存在する。
警察庁のサイバー警察局が案内するサイバー事案に関する相談窓口では、通報と相談に対応するオンライン受付フォームと、都道府県警察の連絡先一覧へのリンクがまとめて紹介されている。
インターネット検索で警察庁とサイバー事案に関する相談窓口と入力すると、公式ページへたどり着きやすい。
8-3 スマホ新法に関する相談窓口
スマホ新法そのものに関係する疑問と不安がある場合は、スマホソフトウェア競争促進法相談窓口の利用が選択肢となる。
この窓口は、公正取引委員会の委託を受け、スマホ法に関する相談と情報提供に対応する専門窓口である。
主な概要は次の通りである。
- 相談対象
スマホ新法の仕組みと、自分の利用環境に関する不安
アプリ事業者との取引に関する相談 - 連絡手段
無料通話の電話番号
ウェブフォームからの相談 - 利用の場面例
外部アプリストア利用で不利な条件を強いられている気がする
アプリ事業者として、新しいルールに合った対応が分からない
利用時は、スマホ法という名称と、気になっている事業者名と状況を簡潔にメモしてから連絡すると話が伝わりやすい。
9. 一週間で進めるスマホ新法対策スケジュール
忙しい人向けに、七日間で最低限の対策を整える進め方を示す。
1日目
端末更新と画面ロックと暗証番号の見直し
2日目
公式配信サービス以外のインストール制限を確認
3日目
位置情報とマイクの権限を整理
4日目
利用中の定期購入と決済手段を一覧化
5日目
子どもと高齢者の端末の設定を確認
6日目
よく使う閲覧用ソフトと検索サービスの安全設定を確認
7日目
家族とルールを確認し、困った時の相談先と電話番号を紙にまとめる
10. まとめと次の一歩
スマホ新法は、端末利用の自由度を高め、公平な競争を促すための枠組みである。
一方で、配信サービスと決済手段の多様化により、利用者自身の判断と防御が以前より重要になる。
本稿で示した通り、次の三点を押さえておけば、日常生活における危険は大きく減らせる。
- アプリは原則として公式配信サービスから入手すること
- 権限と決済と閲覧用ソフトの設定を定期的に見直すこと
- 子どもと高齢者の端末には追加の保護設定と家庭内ルールを設定すること
最初の一歩として、今日この後の数分を使い、端末の更新と配信元制限の設定を確認してほしい。
これがスマホ新法時代の安全対策の土台となる。
続けて、一週間スケジュールを参考に自分と家族の端末を順番に見直していけば、スマホ新法が全面施行された後も、安心して端末を活用し続けることができる。
※具体的な案件やトラブルについては、公正取引委員会の公式サイトを確認するか、消費者センター等の専門窓口へご相談ください。
📱 スマホ新法対策チェックリスト（2025年版）【おまけ】
✅ 基本ルール（まず守る3つの原則）
| チェック | 内容 |
|---|---|
| ☐ | アプリは原則として公式配信サービスからのみ入手する |
| ☐ | 不明な配信元や決済画面では個人情報を入力しない |
| ☐ | 端末の更新とセキュリティ機能を常に有効に保つ |
🔍 アプリ導入前の5つの確認ポイント
| チェック | 確認項目 | 内容 |
|---|---|---|
| ☐ | 配信元 | 公式サイトや信頼できる企業からの案内があるか |
| ☐ | 評価とコメント | 不自然な高評価や極端な低評価がないか |
| ☐ | 更新頻度 | 最終更新日が古すぎないか |
| ☐ | 権限 | 機能に見合わない権限（位置情報・連絡先など）を要求していないか |
| ☐ | 料金 | 「無料」と書かれていても定期課金が含まれていないか |
⚙️ 端末設定の基本対策（1日でできる）
| チェック | 項目 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| ☐ | 端末更新 | OSとアプリの自動更新をON（週1で確認） |
| ☐ | 画面ロック | 生体認証＋6桁以上の暗証番号 |
| ☐ | 配信元制限 | 不明な配信元からのインストールを無効に |
| ☐ | 権限管理 | 位置情報・マイクは必要なアプリだけ許可 |
| ☐ | 無線接続 | 公共Wi-Fiでは金融操作を避ける |
💳 決済と定期購入の管理
| チェック | 内容 |
|---|---|
| ☐ | 月1回、定期購入一覧を確認する |
| ☐ | クレジット明細に不明な請求がないか確認する |
| ☐ | 利用前に解約方法を調べておく |
👨👩👧👦 家族のための保護設定
子ども向け
| チェック | 内容 |
|---|---|
| ☐ | 利用時間と内容の管理機能をONにする |
| ☐ | 年齢制限コンテンツのフィルタを設定する |
| ☐ | 公式以外のアプリ配信元をブロックする |
| ☐ | アプリ導入時に保護者の確認を必須にする |
| ☐ | 家庭内ルールを紙にまとめて共有する |
高齢者向け
| チェック | 内容 |
|---|---|
| ☐ | 操作画面をシンプルに設定する |
| ☐ | 不要なアプリや配信元を追加しない |
| ☐ | 金融アプリは必要最小限にし、操作方法を紙で残す |
| ☐ | 不審な通知が来た時の連絡先を家族と共有する |
🧭 トラブル時の相談先メモ（紙に書いて貼っておこう）
| 用途 | 連絡先 |
|---|---|
| 消費者ホットライン | 188（局番なし） |
| 警察相談専用電話 | #9110 |
| スマホ新法相談窓口（公正取引委員会） | 公式サイト or 専用フォーム |